かつてセンター試験の問題で吉本ばなな氏の「TUGUMI」が出題されたことがあった。それまでの出典を考えればかなりびっくりする出来事だった。例えば問題はこんなのである。

つぐみは笑った。瞳をきらきらさせて、ほてったほほのままで白い歯をにこっと見せた。白いふとんにつやめいたそのほほの赤がほんのりうつりそうだった。今日はとても涙もろくなっている私は、思わず下を向いて、まばたきをした。その時、つぐみが恭一をまっすぐ見て言った。
「(E)お前が好きになった」

問6 傍線部E「お前が好きになった」とあるが、この言い方にこもるつぐみの気持ちを端的に整理するとどうなるか。最も適当なものを、次の1〜5のうちから一つ選べ。

1乱暴と自信 2照れと率直 3単純と悲哀 4媚と喜び 5決断と高慢

正解は2らしい。しかし驚くべきことは、吉本ばなな氏がなんと自分で問題を解いて、この問題を間違ったと告白していることである。「作品は、出版した瞬間に作家の手を離れてもうひとり歩きをしているのです」とのエピソードで彼女は適当に結んでいるけれど、これはとてもおもしろいと思う。むかし、読書感想文なんて鼻くそをほじりながら(!?)適当に書いていたたちなので、なんだか誰に叫ぶともなく、ざまぁみろと思うのである。元ネタはMORI LOG ACADEMYより。