あのクリアなバッハを聞きたくて、もう100回以上は聴いた。グールドの大きな手が動くところを観たくて、ビデオも2本買った。彼が何を考えていたかを知りたくて、関連する書籍も買った。そんな風に、一定の人間をハマらせる力というのを持っている音・人間。弾きながらハミングをしている。なぜなら彼は非常にカンタービレな人だから。弾く姿勢がとても悪く、ペダルなんかほとんど使わない。なぜなら音が濁るから。地下の録音室に籠もってしまった。なぜならコンサートは野蛮な儀式だから。そんなグレン・グールドという人間。アリアから第一変奏に移るときの爆発力は、いつも鴨川が加茂川と高野川に分岐するデルタ上空の、視界360度に映る京都の青い空を思い起こさせる。

バッハ:ゴールドベルク変奏曲

バッハ:ゴールドベルク変奏曲