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- 作者: 坂口安吾
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 1957/05
- メディア: 文庫
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戦争は終わつた。特攻隊の勇士はすでに闇屋となり、未亡人はすでに新たな面影によつて胸をふくらませてゐるではないか。人間は変りはしない。たゞ人間へ戻つてきたのだ。人間は堕落する。義士も聖女も堕落する。それを防ぐことはできないし、防ぐことによつて人を救ふことはできない。人間は生き、人間は堕ちる。そのこと以外の中に人間を救ふ便利な近道はない。
坂口安吾「堕落論」
懐かしくて涙がちょちょぎれそうだ(古)。もやもやもやと高校の授業を思い出す。もっぱらN先生の全く面白くない授業中に読んでいたからだ(悪)。思えばS氏の現国の授業でY氏が坂口安吾を引用した感想を述べたのを聞いたことが、似非文学少年の始まりであった(遅)。言った当人は理解していたかもしれないが、聞いた本人は全く意味が分からなかったと示唆される(鈍)。現在も本音は文が苦なのである。坂口安吾の隣にはなぜか桜井哲夫や中島義道があった。傍線を引いて読んでいたのだから微笑ましい(照)。
青春再びかえらず、とはひどく綺麗な話だけれども、青春永遠に去らず、とは切ない話である。
坂口安吾「青春論」