来週の学会のスライドをせこせこと作る。プレゼンの基本は「削る」ことだ。そのことに気づいたのは博士課程に入ってからだろうか。マスターではデータを取るのに必死で、全て盛り込もうとしがちだった。でもドクターになって、ある程度データが増えてくると、今度は削る必要に迫られる。データを加えるのではなくて、そぎ落としていくのだ。さらにアレンジメントを変えてみる。そうすると、今まで何を意味していたか分からなかったデータが存在感を増してくる時が来る。だんだんとストーリーが浮かび上がってくるのが分かる。サイエンスのストーリーというのはアプリオリには存在しない。これは人間だけが紡ぐ物語なのだということを知った。誤解を恐れずに言えば、フィクションである。でも、この作業が以外と難しい。自分が苦労して出した可愛い可愛いデータなので、全て盛り込んでみたくなるのだけれど、他人に評価してもらうと、ばっさりと切られる。でもそれが本質だと思う。会社のプレゼンなどでは、持っている情報量が個人の比ではないので、この傾向が顕著ではなかろうか。といっても、1のデータを残すためには10のデータを量産しないといけないことは言うまでもない。
午後からは共同研究の打ち合わせで久しぶりに南下した。扱っている対象分子に免疫電子顕微鏡法を取り入れることができるかを検討する。なんとかやれそうだ。こうやってまた、地道なデータをひとつひとつ追加していく。この楽しみが研究に携わる者の醍醐味だとすれば、もうちょっと続けていきたいような気がしないでもないかもしれない(どっちなんだ?)。




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