どうやら村上春樹のデビュー作を読むには年をとりすぎた。アメリカの青春映画を見ている様でなんだかとても恥ずかしく、読者がごめんなさいと謝ってしまう。・・・でも、読んでいくうちに、そんな些細なことはどうでもいいのだと気づいた。ちょうどグールドのバッハを聴くように、読むべきあるいは風の歌を聴くべきポイントはどこでも良かったのだと。ビニールに包まれた、消費によって垢にまみれた村上春樹を、神戸に向かう阪急電車のボックス席で読みながら、時々眠りながら、聴きながら、次はどこに連れて行ってくれるのだろうと楽しみになる。・・・なんだ、彼はどこにも連れて行ってくれない。自分の羊を探しに行こう。

風の歌を聴け (講談社文庫)

風の歌を聴け (講談社文庫)