仕事や研究をしている人が、その成果を他人に伝えるプレゼンテーションという行為は、知識・情報の伝搬という意味のみならず、最低限以上の予算や給料の獲得、つまりは金儲けのための必要不可欠なスキルとなってきている。最近では様々なプレゼンテーションツールが開発されているので、まあ誰であっても(スピーキング能力という大事なスキルを除けば)それなりのプレゼンはできるわけだが、そこで使われるデザインだけは千差万別だ。
例えば細胞の絵を描くとき、ある人は細胞内小器官をセンスをもったタッチで描いているのに対して、ある人は丸と三角だけですませてしまう。科学に携わるものはそれを他の人に伝える義務があるので、はたしてそんな適当でやる気のない絵でよいものだろうか、とまあ最近思う。しかしそれらの情報を受ける側の問題もあって、科学雑誌サイアスなどの廃刊に象徴されるように、科学というものを面白く伝えるメディアがあまり存在せず、科学に関心がない人々が多いというのも事実。そこで、その両者を仲介するのがデザインだと思っている。デザインのよいインパクトのあるイメージは、なんらかの影響を与えるのではないかと。それがきっかけになって科学に興味を持つのではないかと。はたして科学という領域はデザインのモチーフとして成り立つのではないだろうかと。科学雑誌ニュートンなどはそういう努力をしているとは思うが、少し地味すぎる。そこで手始めにこんな質問をしてみた。

科学論文に出ている図(DNAの二重らせんなど)をモチーフにしたセンスの良いデザインTシャツが売り出されたら あなたは欲しいと思いますか?

欲しい 38
欲しくない 63

予想外にyesが低い。現実は厳しい。ウィトルウィウス的人体図のTシャツはみんな着るのになあ。今でこそ美術品ですが、あれだって一種の科学的知見なのに。科学がデザインとして機能するまでには、なんらかの権威が必要なんだろうか。